インフルエンザ 新型脳症 (読売新聞 2005年2月24日)

  子供突然死  睡眠中、薬疑う声も
     インフルエンザに感染した後、中枢神経が急速に侵される「インフルエンザ脳症」で、睡眠中などに子供が突然死
     する新しいタイプが出現、2年前の流行期に大阪府内だけで6人が死亡していたことが厚生労働省研究班の調査
     でわかった。同じ時期に他の地域でも子供数人が死亡、昨冬も死亡例があったという。
     従来の脳症と異なり、けいれんや意識障害などの症状がないまま、急死するのが特徴で研究班は、「共通する
     原因は不明で詳しい調査が必要」としている。
     薬害の専門家からは薬の影響を疑う意見も出ている。
     研究班員の塩見正司・大阪市立総合医療センター小児救急科部長によると、2002年12月 から 03年2月 に
     かけ、府内でインフルエンザになった1〜8歳の男児6人が発症後1〜2日目に、寝ている間に突然死した。
     いずれも死亡前に特別な症状はなく、3人は昼寝中だった。
     解剖が行われのは3人で、いずれも脳全体に浮腫(むくみ)がひどく、「星状細胞」が変性していた。
     この変性も従来のインフルエンザ脳症にはなく、塩見部長らは新型脳症と結論づけた。
     米国でも同じシーズンに睡眠中の学童の急死が5例以上あったという。
     これを受け、研究班(班長、森島恒雄・岡山大教授)は全国に情報提供を依頼。
     他にもインフルエンザの発症直後、睡眠中や病院搬送中に子供が急死したケースが数例報告されたが、詳しい
     調査はできていないという。
     ただ、大阪で死亡した6人のうち、4人は抗ウイルス薬オセルタミビル ( 商品名 タミフル)、 1人はアマンタジンを
     服用。タミフルの4人は服用して3〜7時間後に、息絶えているのが見つかった。他の1人は薬を飲んでいなかった。
     タミフルは01年2月にカプセル、02年7月に飲みやすい粉薬が発売された。
     その後、製造元のロシュ社(本社スイス)による動物実験で、大量投与を受けた幼若ラットが死亡、脳から高濃度
     の薬剤成分が検出されたことから同社は昨年1月、 1歳未満には投薬しないルールを厳守するよう警告した。
     NPO法人医療ビジランスセンター(大阪市)の浜六郎理事長は「異物の侵入を防ぐ機能が未発達な子供の脳に
     薬が入り、呼吸中枢が抑制されて突然死した可能性がある」と見る。
   インフルエンザ脳症
     幻覚やまひ、意識消失などの神経症状が急速に起きる。6歳以下に多く、年間数百人が発症、10〜30%が死亡し
     25%に思い後遺症を残す。
     昨冬の集計では103人が発症、10人が死亡した。
     2種類の非ステロイド系解熱剤との関連が指摘され、国は2000年秋、脳症患者への使用を禁じたが発症の原因
     はよくわかっていない。
     厚生労働省研究班は「ワクチンで必ず防げるものではない」としている。

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