葉酸  (産経新聞 2001年11月21日)

  生活習慣病に予防効果
     赤血球や細胞の新生に必要なビタミンである「葉酸」。最近では葉酸に、がんや老人性痴呆症予防効果があるの
     ではないかといった視点での調査研究もさかんに行われている。
     米国では必要摂取量を日本の二倍に設定しており、生活習慣病予防に積極的にな摂取を呼びかけている。
     葉酸は主にレバーや緑黄色野菜、豆類などに含まれるビタミンBの一種。
     造血作用や身体の発育・成長を促進するほか、皮膚を健康にするなどの生理作用がある。葉酸が不足すると
     悪性貧血を起こす事は知られていたが、身体に不可欠の栄養素として認識されるようになったのは最近のこと。
     欧米の調査で、葉酸を必要量摂取することで、赤ちゃんの二分脊椎や無脳症など 「神経管欠損障害」 の発症
     リスクを軽減できることが分かったためだ。
     もちろん、これらの病気の原因は複合的で、葉酸摂取が足りていても発症の可能性はあるが、米国やカナダでは
           約10年前、日本でも昨年から、妊娠計画中の女性に一日400μgの葉酸摂取を呼びかけるようになった。
     さらに最近では、がんやアルツハイマー病と葉酸の関係を探る研究が相次いでいる。
     ビタミン広報センターの末木一夫センター長は「以前から葉酸の構造を少し変えたものが抗がん剤の原料として
     使われており葉酸に、がんの予防効果があるのではないかと、様々な研究が行われるようになってきた」と話す。
     栄養学の学術雑誌「ヌートリション・レビウ」によると、米国で9万人の看護婦に対して行った調査で、葉酸を400μg
     以上含むマルチビタミンサプリメントを15年以上摂取した女性では、そうでない女性に比べ結腸・直腸がんのリスク
     が75%減少したことが示されている。
     さらに適量の葉酸摂取で、喫煙男性の膵臓がんや飲酒女性の乳がんのリスクが減少したとの報告もある。
     また、米のカリフォルニア大・デービスメディカルセンターのジョシュア・ミラー助教授が行った調査では、アルツハ
     イマー病患者164人の体内の「ホモシステイン」が、病気のない高齢者に比べ高い値であることが分かっている。
     ホモシステインは動脈硬化の危険因子の一つとされており、このに葉酸やビタミンB6などが関与しているといわれ
     ている。
     米国では血漿ホモシステイン濃度の安定した水準を維持するために、必要な葉酸摂取量を一日400μgとしている
     が、日本ではその半分の200μgに設定されている。( μg = マイクログラム )
     元女子栄養大大学院教授で内科医の安田和人さんは「日米の必要量の差は、基準をどこにおくかの違いだが、
     葉酸はビタミンB6、B12といっしょに摂取することで、動脈硬化に由来する生活習慣病の予防に役立つことが分
     っており積極的な摂取を心がけて」と話している。

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