中枢神経系から独立して消化をになう「第2の脳」
     腸の役割は簡単にいえば、胃から送られてきた食物を消化、吸収して残ったものを便として排出する、ということ
     になる。しかし腸には、食物中の化学成分をすばやく判断し、消化を行うために周辺の臓器に指令を出すという、
     とても大事な働きもある。これは脳などの中枢神経系から指令を受けているわけではなく、独立した働きなのだ。
     近年の研究から、腸は研究者の間で 「リトル・ブレイン(小さな脳)」、「第2の脳」 などとも呼ばれる。
     脳を持たず、全身が腸ともいえる原始的な生物ヒドラの研究から、「脳は腸の神経細胞から生まれた」 とする説
     もあるくらいである。
     腸の内壁の所々にあるセンサー細胞(基底顆粒細胞)は、食物の科学成分を細胞の上部で感知して、下部から
     ホルモンを分泌し、すい臓、肝臓、胆のうなど周囲の臓器に食物の情報をわたして適切な活動を起こさせるのだ。
     (ホルモン:遠く離れた組織に情報を伝えて生理的作用をおよぼす物質)
     センサー細胞はさまざまな化学成分に対応できるように10種類以上ある。例えば、食物にタンパク質が多く含
     まれていれば、腸は消化し易いようにすい臓に消化酵素を分泌させ、また脂肪が多く含まれていれば胆のうを
     収縮させて脂肪の消化を助ける胆汁を腸内に招き入れる。もし有害物質を感知すれば、腸自身の内壁から大量
     の腸液が分泌され、体外に有害物質を追い出してしまう。これが下痢だ。
     また、強酸性の胃液があやまって腸内に入ってくると、すい臓から大量の水とアルカリ性の重炭酸が分泌され、
     酸を中和する。胃液は強力で放っておくと腸内が傷ついてしまうからだ。
   小腸と大腸
     小腸は、十二指腸と空腸、回腸からなり、約3メートルの長さをもつ。一方、大腸は、盲腸、結腸、直腸からなり、
     約1.5メートルの長さをもつ。消化と吸収の大部分は小腸で行われる。大腸は、小腸から送られてきたドロドロ
     の消化物の残りカスが約4分の1の体積になるまで水分を吸収し、固形状の便をつくる。
     

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