「うまみ」の受容体が見つかった。
     唾液はデンプンを分解する消化液である。しかし、食物が胃まで達すると、唾液の消化作用はなくなってしまう。
     順天堂大学医学部の坂井建雄教授は、「むしろ唾液はデンプンを甘みのある糖にかえて味覚を向上させ、食欲
     をうながすという役割の方が大きいでしょう」 と説明する。
     味覚は、舌と口の内壁にある「味蕾」(みらい)とよばれる化学センサーで感知される。味蕾という名前は、形が
     花の蕾(つぼみ)に似ているところからきている。味蕾の中には 「味細胞」 があり、細胞表面の味覚受容体で
     味覚物質を感知する。そしてその刺激は味細胞の下部についた神経から脳へと伝えられる。
     ただ、味細胞がどのような物質に対してどのようなプロセスで味覚信号を神経まで伝えるのか、といった分子
     レベルでのメカニズムはまだ分からないことも多い。
     味覚の基本要素が、塩味、甘味、苦味、酸味の4つだけかについても議論が分かれている。
     日本人になじみ深い「うま味」を第5の味覚とする説が根強いからだ。コンブだしのおいしさの元が、アミノ酸の
     一種のグルタミン酸であることは、1908年に日本で発見された。この独特の味は、うま味と命名され今では
     「UMAM I (うまみ)」は日本発の国際語として使用されている。このUMAM I が、第5の味覚として世界的に
     認知されるきっかけになるかもしれない発見が最近になって報告された。うま味の元、アミノ酸の受容体分子
     が同定されたのだ。しかも、うま味受容体をつくる遺の子は個人によって違いがあり、どうやらこれが味覚の
     個人差をつくっているようなのだ。アミノ酸は、タンパク質の元となる物質で生命にとって必須の栄養素だ。
     うま味を感じとる能力は過酷な進化の競争で、大事な役割を果たしたと考えられている。

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