P E T 検査 (読売新聞 2004年11月9日)
  がんの早期発見を目指して注目される検査法
   がんの有無・増殖を画像でチェック
     PETとは Positron  Emission  Tomgraphy ( 陽電子放射断層撮影法 )の略称。
     病気の有無や病状を診断するために、からだの機能や代謝の状態を断層画像で表す新しい検査法だ。
     X線CT、MRI、超音波診断などによる検査が主に「かたち」を見るのに対して、PETによる検査は「働きや動き」を見
     るのが異なる点と言える。
     がん細胞は正常な細胞に比べて増殖が激しく、細胞のエネルギー源であるブドウ糖を多く取り込む性質がある。
     この性質を利用し、静脈注射したFDG薬剤(陽電子を放出するブドウ糖)が器官に集まる様子を特殊カメラで撮影し、
     体内の薬剤の分布状況を見ることによってがんの有無を判断しようというのが、PET検査の仕組みだ。
     薬剤が異常に集積している箇所は画像では強く光る。その為、2〜5ミリ程度のごく小さながんでも発見できる。
     しかし、FDGは炎症巣にも集まるので、がんとの区別が難しい場合もある。
   悪性度、転移、治療効果の判断なども可能
     これまでのがん検査は、部位や器官別に何回かに分けて行われていた。しかし、PET検査では全身を一度に調
     べることができ、がんのある部位を迅速に特定することが可能となる。
     その為がんの転移についても早期発見が期待できる。また、増殖の激しい悪性度の高いがんは薬剤を多く取り
     込む為、悪性度や進行度も画像に現れた光の強さや大きさによって判断できる。
     この性質を利用して、がん治療の効果を調べる為にも活用できる。抗がん剤や放射線治療が効いてくると薬剤
     の取り込みが少なくなるからだ。
     このようにPET検査は、がんの有無や悪性度・進行度の診断、転移や再発の発見、治療効果の判断などに役
     立つ検査法。
     すでに普及が進んでいる米国では、最初にPET検査を行って全身を調べてから、CTやMRIなどで特定の器官の
     詳しい検査に移るという 「PET ファースト」 のシステムが整いつつある。
   CT、MRIとの組み合わせで高精度の診断が可能に
     PET検査による画像は解剖学的な位置情報が少ないので、CTやMRIによる検査の画像と組み合わせることに
     より、より精度の高い診断が可能になる。
     また、PET検査でも見つかりやすいがんと、見つかりにくいがんがある。その為、最近ではPET検査とCTが一体
     となった検査機器(PET - CT装置)の普及も進んでいる。
     さらに、PETとMRIを組み合わせた合成画像処理技術も誕生。今後はPETとMRIを一体化したシステムによる
     画像診断処理が検査の主流になっていくものと思われる。
     ところで、PET検査はがんだけでなく、他の検査にも応用が可能だ。例えば、脳の血流状態やアセチルコリン
     など神経伝達物質の働きをPETを使って調べることで、アルツハイマー型痴呆や脳虚血痴呆の診断もできる。
    また、心筋の働きを見ることで虚血性心筋梗塞などの病態も診断することができる。
     日本人の3大死因は 「がん、脳卒中、心臓病」 だが、今後PET検査が普及するようになればこれらの病気の
     早期発見・早期治療にもつながっていくだろう。
   早期発見により負担の軽減を
     「予防検診の時代」と言われる21世紀。 IT 技術の進歩、遺伝子工学の発達、ナノテクノロジーの発達で検査
     は大きく変化していくと思われる。
     早期発見により、外科手術のように身体を傷つけずに病巣だけを取り除く低侵襲治療など、より負担の少ない
     治療へつながっていくことも期待される。
     そうした流れの中、PETに代表されるハイテク検査機器の開発と普及が、今後広がっていくのは間違いなさそうだ。
   PET 一口メモ
     PET 検査に使用されるFDG薬剤は正確には18F-FDGと呼ばれ、グルコースの水酸基をフッ素-18という同位
     体元素に置き換えたもの。
     同位体元素の放射能の強さが半分に減る時間を半減期というが、フッ素-18の場合は約2時間と短く、仮に
     体に残っても影響が少ない。
     半減期が短い為、FDGは生成してすぐ使用する必要があり、PET検査を行う施設にはFDG生成装置が設置される。

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