むずむず脚症候群 (読売新聞 2005年3月27日)
  眠れない … 薬で症状緩和  睡眠薬は逆効果?
     栃木県の70歳の男性は、20歳頃から不眠に悩まされてきた。横になってじっとしていると足のふくらはぎの
     辺りがむずむずしたり、ぴくついたりする。
     まるで虫がはっているかのような嫌な感じだ。足を曲げ伸ばしして動かすと、一時的にむずむず感は消えるが
     じっとしているとまた出てくる。
     理髪店で髪を切る間も、じっと座っていられない。病院にかかり、睡眠薬などを飲んだこともあるが、良くなら
     なかった。
     昨年、独協医大病院(栃木県)の睡眠外来を受診して「むずむず脚症候群」と診断された。
     「ドーパミン受容体刺激薬」で、むずむず感がなくなり、不眠も解消した。
   潜在患者が多数
     むずむず症候群は、1990年頃から米国で 「レストレス・レッグ症候群 (RLS)」 という名前で知られるように
     なった。
     「レストレス」は「落ち着きのない」という意味だ。欧米では人口の5〜10%の患者がいるという研究もある。
     日本での実態は不明だが、独協医大神経内科教授、平田幸一さんは「医師の間でも、この病気はまだ、
     十分認識されておらず、潜在的な患者は多いのではないか」と話す。
     自覚症状による診断基準のほか、睡眠中の筋肉の動きを測る筋電図や脳波検査などで診断する。
     検査は通常、1泊2日か2泊3日の入院が必要だ。
     むずむず感が起きるはっきりした理由は不明だが、、別の病気などに伴って起きる場合(二次性)と、特別
     な原因がない場合(特発性)がある。
     二次性では、鉄欠乏性の貧血、腎不全で人工透析をしている人、手術で胃を切除した人や妊娠中の女性
     にも見られるという。貧血なら、鉄分補充などで症状改善を図る。
     さらに見つかりにくいのが特発性の場合だ。受診しても、「気のせい」で済まされることもあり、睡眠障害の
     専門外来で、ようやく診断される場合が多いという。
   何故効くかは不明
     主に特発性の場合の治療に使われるのが、抗てんかん薬のクロナゼパムと、パーキンソン病の治療に使う
     ドーパミン受容体刺激薬だ。
     なぜ効くのか、確かな理由は不明だが、症状を抑える効果があるとされる。
     ドーパミン受容体刺激薬は脳神経に指令を伝えるドーパミンという物質の働きを補う薬で欧米の治療指針
     では第一に使う薬とされる。
     クロナゼパムは、眠気を誘う副作用があることも、症状緩和に役立っているという。
     薬の量は、てんかんやパーキンソン病の治療に使う場合の数分の一で済み、副作用の恐れは少ない。
     ただ増量が必要な場合もある。どのくらいの期間、飲めばよいか、よくわかっていない。
     いずれも、むずむず脚症候群の薬としては承認されておらず、現在は専門医が処方した場合などに
     特例的に保険の審査を通っている。
     ドーパミン受容体刺激薬は、正式な承認に向けた臨床試験が行われる予定だ。
     正確に診断されずに「不眠症」と言われ、睡眠導入薬や抗うつ薬を使うと効果がないばかりか、かえって
     悪化することさえある。
     日本睡眠学会は睡眠障害に詳しい医師、医療機関などを認定して公開しており、平田さんは「専門医を
     受診してほしい」と話している。
   むずむず脚症候群の診断基準
     1.脚を動かしたいという欲求が、不快な異常感覚に伴って生じる。
     2.安静にして、静かに横になったり座ったりしている状態で始まる。
     3.歩く、脚を伸ばすなどの運動を続けている間は、症状が改善する。
     4.日中より夕方・夜間に強まるか、または夕方・夜間にのみ起こる。

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