免疫系
半世紀前に、いろいろなビタミンが分離され研究された時、ある種のビタミンが欠乏すると免疫系
の弱化が起こり、血液中の白血球が減少し、感染症に対する抵抗力が低下することが分かった。
免疫系を健全に保つのに必要なビタミンは、ビタミンA、ビタミンB12、パントテン酸、葉酸、および
ビタミンCである。
これらのビタミンは、ふつう奨励されているより多くの量をとると、免疫系が増強される。
免疫系に及ぼす効果は、ビタミンCがいちばん大きい。
ビタミンCの摂取量を増やすと、抗体の産生量が増えることが分かっている。
プリンツらは、健康な男子学生を対象として、その20人にビタミンC1グラムを与え、20人には
プラシーボ(偽薬)を与えた。
その結果、ビタミンCを与えた被験者では、75日後に血清中の免疫グロブリン、IgA、IgG、IgM
の濃度がかなり増加した。(1977年、1980年)
同様に、抗体の産生がビタミンCの摂取量に依存することは、モルモットの実験でも観察されて
いる。モルモットは人間と同じようにビタミンCを体内で作れず外から摂取しなければならない。
米国国立ガン研究所の米本らは、18〜30歳の5人の健康な男女を対象に研究を行った。
この5人の男女は食事からしかビタミンCを摂取していなかった。
各人に3日連続して1日5グラムのビタミンCを与えた。すると新生リンパ球の産生速度は2〜3
日で2倍近くに増大し、その状態がその後1週間続いた。1日10グラムを3日間投与すると
それが3倍になり、18グラムでは4倍になった。
この研究からすると、ガンや感染症の患者がビタミンCを大量に摂取すればリンパ球の関与
する生体防御機構の活動が活発になりよい経過を辿る、ということが間違いなく言えるだろう。
健康な者でも、何らかの疾患をもった患者でも、ビタミンCの摂取量を増やすと白血球の動き
が活発になり、その感染部位への移動が速くなることが多くの研究者によって報告されている。
さらに感染部位に到達してから、ビタミンCが白血球の食菌能力を増大させることも明らかに
なっている。このような過程をへて白血球は、異物と認められ破壊の目印を付けられた細菌
細胞や悪性細胞を取り囲み破壊する。つまり、各リンパ球が異細胞を取り囲み、飲み込む。
ビタミンCは、この過程で必要とされるのである。かなり以前に発見されたことだが(1943年)
白血球は十分にビタミンCを含んでいないと食菌活動が鈍る。
最近の研究で次のことが明らかになっている(1973年)。
スコットランドで普通の食事を摂っている健康な人は、白血球のビタミンCの量が食菌活動に
必要な量より幾分多いが、風邪にかかった時には1日目に早くも半分に減少して、その後、
2〜3日間は低い値が続き、細菌の二次感染を受けやすくなるのである。
この時、1日250ミリグラムのビタミンCを与えたが、白血球のビタミンCは十分な水準に回復
せず、その食菌活動が効果的に行われるまでに至らなかったが、風邪の引き始めに6グラム
与え、さらに1日1グラムを摂らせ続けると、この重要な防御機構を十分に働かせることがで
きた、という。私は、この研究から次のように考える。
ビタミンCの予防的摂取量(健康状態を良好に保ち、疾病に対する抵抗力を高める為の摂取
量)は、大抵の人で250ミリグラムより多い。その他の研究結果も取り入れて考えると250
〜4000ミリグラム(あるいは1万ミリグラム)が、大多数の人に対して勧められる1日の摂取
量である、と結論する。この量を摂取すれば、カゼやインフルエンザの罹患率(りかんりつ)が
減少し、ウイルス感染を受けた時でも、二次的な細菌感染症を防げるであろう。
インターフェロンは、抗ウイルス作用を発揮するタンパク質で、ウイルスの感染を受けた細胞
(及び、おそらく悪性細胞)によって作り出される。そして近隣の細胞に広がっていき、それら
の細胞を感染に抵抗できるように変える。インターフェロンがカゼなどの感染症やガンを防ぐ
のに役立つことがある程度はっきりしている。
人は体内の種々の細胞によって、いくぶん働きの違う、約20種類のインターフェロン分子を
作り出している 。ビタミンC摂取量を増やすと、インターフェロンの産生が増えるという予測は、
現在立証されている。キャメロンの「もっとビタミンCを摂って、自分でインターフェロンを作りな
さい!」という忠告に従うのが賢明だろう。
プロスタグランジンは、小さな分子(脂肪様の脂質)で、人体の機能に重要な役割を果たして
いる。それはホルモンとして働き、心拍、血流、薬による細胞の損傷、免疫系の応答などの
調節に関与している。組織は損傷を受けたり破壊されたりすると、プロスタグランジンを放出
する。プロスタグランジン(特に E2 と F2-アルファ)は他の物質とともに組織の炎症
--発赤
・腫れ・痛み・熱 --
を引き起こす。炎症が起こるのは、このホルモンに反応してその部位に
血流が増え、白血球やその他の細胞および色々な物質が集まるからである。
1978年のホロビンの報告によると、ビタミンCはE2 と
F2-アルファの合成を抑制し、従って
かなりの抗炎症作用を発揮する。しかし、E1
はその合成量を増やす、と報告している。
プロスタグランジンE1
は、リンパ球の形成に関わり、免疫応答の調節に大きな役割を果た
している。したがって、ビタミンCが E1
の産生を刺激するという意味でもまた、その適正量
の摂取は免疫系を強化し良好な健康状態の維持に役立つのである。