筋肉
赤い筋肉が持久力を生み、白い筋肉が瞬発力を生む
マラソンと短距離走の両方が一流という人はそうはいないだろう。それは二つの種目で使う筋肉が違うからだ。
短距離走に有利なのは素早く、力強い収縮ができる「速筋」(そっきん)である。マラソンに有利なのは速筋と
比べてゆっくり弱くしか収縮できないかわりに長時間の運動が可能な「遅筋」(ちきん)である。
速筋では、収縮運動を続けると乳酸(にゅうさん)という疲労物質がたまりやすい。乳酸がある程度たまって
しまうと筋肉は収縮できなくなってしまう。これが速筋に持久力がない原因である。
一方、遅筋は酸素をたくわえておくタンパク質「ミオグロビン」をたくさん持っている。筋肉がグリコーゲンという
エネルギー物質を、無酸素状態で分解してエネルギーを作り出すと、乳酸ができてしまう。しかし、遅筋には
ミオグロビンに酸素が豊富にたくわえられているので、グリコーゲンは二酸化炭素と水までしっかりと分解され
乳酸がたまりにくく、疲労しにくい。これが遅筋が持久力をもつ理由である。
ミオグロビンは、血液中の赤血球で酸素をつかまえる役割を果たしている「ヘモグロビン」の仲間で「ミオ」は
筋肉をあらわす。ヘモグロビンが血液を赤くしているように、ミオグロビンも筋肉を赤くするので、遅筋は別名
「赤筋」(せっきん)とよばれる。速筋は赤筋とくらべると白っぽいので「白筋」(はっきん)とよばれる。
人体ではほとんどの筋肉で赤筋と白筋が混ざっているので」、筋肉はピンク色に見える。
筋肉の線維を分割していくと「アクチン線維」 と
「ミオシン線維」という2種類の細長い線維が交互に並んで
できていることが分かる。この2つの線維が互いにすべり込むことで筋肉全体が収縮するのだ。
これは伸縮できる望遠鏡で2つの円筒が互いにすべり込むことで縮むのに似ている。
このアクチン・ミオシン線維は自ら動くことができるミクロな “分子リニアモーター”
といえる。