血管系とリンパ系
  がん細胞と絶えず戦う免疫細胞
     血管は、毛細血管まですべてつなぎ合わせると全長6000キロにも達する。6000キロといえば地球の半径
     に近い距離だ。血液は、酸素と栄養を全身の細胞に渡し、細胞から二酸化炭素と老廃物を受け取る。
     また血液中の免疫細胞(白血球、リンパ球)は、侵入してくる病原体と戦ってくれる。
     直径100分の1ミリメートルほどしかない毛細血管は、骨の内部も含めて全身くまなく行き渡っている。
     血管がないのは、軟骨、眼の水晶体、結膜ぐらいなものだ。
     血管のほかにリンパ管も全身に張り巡らされている。リンパ管を流れるリンパ液は淡い黄色の液体だが、
     実体は血液から赤血球などを除いた液体成分と同じと考えていい。毛細血管から組織へとしみだした血液の
     液体成分がリンパ管に入ると、リンパ液とよばれるのである。リンパ液には血液と同じく、病原体と戦う免疫
     細胞が含まれている。免疫細胞は、基本的に体内で作られたものではない“異物”に対して攻撃をしかける
     が普通の細胞が変化して生まれるがん細胞も攻撃することが分かっている。
     がん細胞は人体にとって異物だということである。特にナチュラルキラー細胞(NK細胞)とよばれる免疫細胞
     は、いつも全身をパトロールして、がん化した細胞を見つけると攻撃し、がんを未然に防いでくれている。
     人体では病気ではなくも常にがん細胞は生まれているという。それが病気のがんとして表にでないのは免疫
     細胞たちが、がん細胞の増殖を抑えてくれているからなのだ。
     しかし、免疫細胞の働きも万全ではなく、がん細胞も自らの表面を糖の鎖で覆面して、免疫細胞が異物と
     認識できないようにしたりと、あの手、この手で攻撃をかいくぐる。
     そこで免疫細胞の働きをより活性化してがんを治療するという試み、「免疫療法」が最近注目を集めている。
     たとえば、がん細胞に特有な成分を、ごくわずかだけ患者に与えることによって、免疫細胞の働きを活性化
     させる「ワクチン療法」など、さまざまな方法が研究されている。

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