肝蔵1
  最先端科学もまねできない生体内の多目的科学工場
     腸は消化・吸収、肺は呼吸、腎臓は尿をつくる器官。 では肝臓は?
     500以上の化学反応を行っている肝臓の複雑な機能をひと言で言い表すのは難しい。
     あえて例えると「人体の多目的化学工場」もしくは「栄養素の物流センター」といえるでろうか。
     心臓や腎臓など人工臓器の開発が進んでいる臓器と比べて、人工肝臓の実現はその複雑さからどの臓器より
     も難しいといわれている。
     可能性があるのは完全な人工物ではなく、生きた細胞を一部で利用したハイブリッド型の人工肝臓と考えられる。
    肝臓と同じ糖の代謝(生命活動に必要な糖の合成や分解)を行おうとすると、なんとビル1棟分に相当する化学
     工場が必要とさえいわれているのだ。
     肝臓の重要な機能の一つは、糖、脂肪、タンパク質といった三大栄養素の代謝や貯蔵である。
     例えば腸で吸収された糖は血管を通して肝臓に運ばれエネルギー源として利用できるブドウ糖に分解される。
     さらに余分なブドウ糖は、つなぎ合わせて保存に適した「グリコーゲン」という分子に作り変えられる。
     貯蔵されたグリコーゲンは体がエネルギーを必要とする時にはブドウ糖に再び戻され血液中に戻される。
     全身60兆個といわれる細胞のエネルギーを安定的に供給しているのが肝臓なのである。
     小腸での脂肪の消化・吸収を助ける胆汁の合成も肝臓の重要な役割だ。

     肝臓の病気のサインとして全身が黄色くなる 「黄疸」 (肝臓以外の病気でもおきる) はよく知られているが、

     これは胆汁に含まれる「ビリルビン」という色素が肝臓の機能障害で血液中に増えてしまう為に起きる。

    肝臓の主な機能

糖の代謝 グリコーゲンの合成・貯蔵、ブドウ糖の血液中への放出、糖類のブドウ糖への変換
脂質の代謝 脂肪酸やコレステロールの合成・分解、脂質の水溶化と血液中への放出
タンパク質の代謝 血液中のタンパク質の合成、必須アミノ酸からの非必須アミノ酸の合成
ビタミン等の合成 ビタミンA、B12、Dや鉄を貯蔵
胆汁の合成と分泌 胆汁酸、コレステロ−ル等を含む胆汁を、老廃赤血球などを材料に生産
薬物の代謝(解毒) 酵素群チトクロームP450などで解毒、薬物、アルコールなどを代謝する
循環血液量の調整 心臓からの拍出量の25%以上が流れ込んでいる。

 

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