ガン

     新しい考え方の一つに、ビタミンCがガンの予防と治療の両方に使用できる、というのがある。この線に沿って
     最も重要な研究を行なったのは、エワン・キャメロン博士である。博士は、スコットランドのロッホ・ローモンドサ
     イドにあるヴェール・オブ・リーヴェン病院の外科部長だったが、現在はライナス・ポーリング科学医学研究所
     の医学主任研究員である。エワン・キャメロンは我々と共同研究をする前に、スコットランドの病院で何百という
    ガン患者に手術を行っていた。そして、非常に大きな苦痛を与えるこの病気には新しいアプローチが必要であ
     る、と考えていた。そして1966年に 『 ヒアルロニダーゼ と ガン 』 と題する著書を刊行した。その本の中で彼
      は、人体の自然防御機構を増強すればガンをかなり抑えられるであろう、と言っている。特に悪性腫瘍は、
     ヒアルロニダーゼという酵素を生成することが知られており、この酵素が周囲の組織の細胞間セメント質(コラ
     ーゲン)を攻撃し、それを弱めて組織に新生物が侵入できるようにする、と述べている。従って、細胞間セメント
     質(コラーゲン)を強固にする方法があれば、その方法で身体の自然防御機構を増強して、悪性細胞の攻撃に
     対抗できるという。キャメロンはいろんなホルモン療法を試して失望していたが、すぐにビタミンC療法が有効
     であると考え、それから10年間、数百人の進行ガン患者に大量に与えた。その患者のほとんどは通常の治療
     を受けて、それが効かなくなった者だった。彼とその研究者はその観察をいくつかの論文にして発表した。
     ある論文では、ビタミンCが痛みの軽減に非常に効果があり、大量のモルヒネやヘロインを処方していた患者
     にそのような麻薬を与えないで済むようになった、と報告した。(1973年)
     ビタミンC療法を始めてキャメロンが始めに気づいたのは、患者のほとんどが精神的に落ち着き全身状態が良
     くなる、ということだった。これらの患者が受けた恩恵には、精神的な落ち着きの他に、痛みの軽減、悪性腹水
     と悪性胸水の減少、血尿症の軽快、悪性肝腫脹と悪性黄疸の改善、赤血球沈降速度と血清ムコイド値の低下
     などがあり、すべてが悪性作用の軽快を示すものである。したがって、一般状態の改善および生存期間の延長
     はビタミンCの直接・間接の作用によって、自然防御機構が増強され、悪性因子そのものが攻撃された結果で
     ある、と結論できよう。
     サンフランシスコに住む81歳の人から来た手紙の一部を抜粋する。
     『私は1980年9月4日に大腸ガンの手術を受けました。その時、肝臓に転移していることがわかり直径35ミリ
     の腫瘍が見つかりました。しかし手術は不可能でした。私はガンに関する本を読み始め、同時に 5F-U の注射
     を受けました。先生がビタミンCとカゼについて書いておられることは存じておりましたが、スコットランドにおける
           キャメロン博士と共同のガンについての研究は知りませんでした。医学書で肝臓に転移したガンは死の宣告に
     等しく、2、3週間から18ヶ月しか生きられないことを知りました。大抵の研究では、治療不能な転移ガン患者
     の生存期間は、平均 6.1ヶ月だそうです。また、5-FU がプラシーボと何ら変わりないこともすぐに分りました。
     ですから、それをやめることにしました。私が診てもらっている腫瘍専門医はそれに反対しませんでした。肝臓
     のスキャンの結果は、この注射を打っている間に腫瘍が、直径 35ミリから 52ミリに成長していることを示して
     いたのです。生来、私は楽天家ですが15歳のとき以来、死ということを考えていました。手に入るものはすべ
     てかき集めて、ガンに関する先生のお考えを手引きに ビタミンC、ビタミンE その他の栄養補給をベースにした
     療法を実践しました。3ヶ月間ビタミンCを1日10〜12グラムを摂った後、2回目の肝臓スキャンを受けました。
     腫瘍の大きさに変化はありませんでした。しかし、大きくなってはいませんでした。3ヶ月に1度、肝臓スキャン
     を受けました。腫瘍はずっと同じでしたが、1984年10月15日の超音波スキャンで、2度に渡って驚いたこと
     に腫瘍の容積が32%に減っていることがわかったのです。これを確かめる為に一連の検査が行われました。
     一度は技師によるものであり、もう一度は検査部長の医師によるもので、このことは正確に確認されたのです。

     腫瘍にはカルシウムが浸潤し始めていました。それ以来私は健康でガンの徴候はなく、あれこれと仕事をし、

     湾で自分のヨットを走らせてています。この病気はふつう肝臓から肺に進むので、毎年、胸のエックス線写真
     を撮っています。私の肺はきれいです。先生は著書の中で、不快を感じるまでビタミンCの摂取を増やし、
     それから少し減らすように勧めておられます。私に下さったお手紙で、先生は1日25グラムを提案されました。
     しかし、私はこれまで2年以上36グラムを摂ってきました。何回にも分けて摂ればこれで何の不都合もありま
     せん。先生がビタミンCはガンを治すわけではないが、ガンの治療を補完するとおっしゃるのは絶対に正しい   
     と思います。化学療法は、いかなるものであれ身体の免疫系を損なう、というのも事実です。私の場合は、
     素晴らしい免疫系を獲得したに違いなく、さもなければガンはとうの昔にリンパ腺の一部に達していたでしょ
     う。私の肝臓の腫瘍が浸潤しなくなったことは明らかです。しかし、今後のことは分かりません。
     いつかガンで死ぬことは確かです … その前に老衰で死なないとしての話ですが。1985年1月16日現在
     で81歳です。』 この手紙は、キャメロンと私が受け取った多数の手紙の代表的なものである。
           我々の研究結果から、キャメロンと私が勧めるのは、すべてのガン患者が、この病気のできるだけ初期から
     ビタミンCの大量投与をして、通常の治療を補完することである。この方法で何人の患者が助かるだろうか。
     我々が持っている定量的な情報は、主に1日10グラムのビタミンCを投与されたスコットランドの患者につ
     いての観察に基づいている。
     数百人の患者について観察した結果について、次のような結論を出している。
       ▽ カテゴリー1   腫瘍は反応しないが一般状態が改善される   約20%
       ▽ カテゴリー2   少し反応する                      約25%
       ▽ カテゴリー3   腫瘍の成長が遅くなる                約25%
       ▽ カテゴリー4   腫瘍の成長が止まる                  約20%
       ▽ カテゴリー5   腫瘍が退縮する                    約9%
       ▽ カテゴリー6   完全に退縮する                    約1%
     1日10グラム以上の摂取では更によい結果が得られよう。『ガンとビタミンC』で、キャメロンと私は、次のよ
     うに結論した。「簡単で安全な治療であるビタミンCの大量投与は、進行ガン患者の治療に計り知れない効果
     がある。我々はビタミンCは初期ガン患者の治療に、より大きな効果がありガンの予防についても大きな価値
     がある、と信じる。この本の最後の一説は次のようである。「強力な化学療法を受けている間を除いて、我々
     はすべてのガン患者の治療に、できるかぎり初期からビタミンCを補給するように強く主張する。我々はこの
     簡単な方法がガン治療全体の成績を向上させると、と信じる。それはガンに対する患者の抵抗力を増強する
     ばかりでなくガンの治療それ自体に伴う重大で時には致命的な合併症から患者を守るからである。」
     今日、強力な化学療法を受けながら1日10グラムあるいはそれ以上のビタミンCを摂っている患者を見かけ
     ることができる。ビタミンCに効果があることは明らかで、このビタミンは毒性の強い化学療法剤による不快な
      副作用(例えば、吐き気や抜け毛) をかなりの程度抑え、化学剤療法の効果をたかめるようである。
     我々が推奨するのは、ビタミンCの大量摂取をできるだけ早く始め、ときには腸の耐容限度まで摂ることで
     ある。ガン患者に対する通常の治療法を補完する為に、ビタミンCを使用することは多くの利点がある。ビタミ
     ンCは高価でない。重大な副作用がない。食欲を増進させる。ガン患者を悩ます惨めな感情を和らげる。
     全身状態を改善する。患者に生活を楽しむ力を与える。どの患者にも、ビタミンCを使用し、通常の治療法
     と他の栄養素の適量摂取を併用することによって、この疾患を長年にわたって抑制できる可能性があるの
     である。1951年に、ガン患者は一般に、血漿と白血球のビタミンC濃度が非常に低く、しばしば他の人の
     半分しかないことが報告された。この観察は、その後35年間に何度も立証されている。
     1979年に、キャメロン、ポーリング、ブライアン・レイボヴィッツは13の報告について調べたが、そのすべて
     が血漿および白血球の濃度の著しい低下を示していた。ガン患者の白血球のビタミンC濃度が低いと悪性
     細胞、細菌などを取り込んで消化する、という白血球の重要な機能が発揮されないガン患者の血中ビタミ
     ンC濃度が低いのは、身体が病気を抑えようとして、ビタミンCを使い果たすからである、と説明できる。
     ビタミンC濃度が低いということは、身体の防御機能をできるかぎり効果的に維持する為に、患者にこのビタ
     ミンを大量に投与しなければならないことを示している。
     ビタミンCとガンについての初期の研究の中に、大量のビタミンCを18ヶ月という長期間に渡って投与した
     ものがある。1954年に、イリノイ州ロビンソンのエドワード・グリーア博士が報告したもので、極めて大
     のビタミンCの経口投与によってガン(慢性骨髄性白血病)が2年以上に渡って明らかに抑えられたという。
     この患者は、ある石油会社の初老の重役で様々な病気を持っていた。1951年の9月に慢性の心臓病に
     なり、1952年5月にはアルコール性肝硬変と赤血球増加症だいわれた。1952年8月、血液専門医に
     よって慢性骨髄性白血病の診断が確立された。1952年9月に歯を抜いた時、歯茎の治癒を促進する
     為にビタミンCを摂るように勧められた。そこで、直ちに非常に大量 - 1日に24.5〜42 グラム(7錠の
     500ミリグラム錠剤を7〜12回)を摂り始めた。彼によると、これだけ大量に摂った時にたいへん調子が
     良かったので、この処方を自分で決めたという。そして体調が良いと言い活発に仕事を続けた。
     グリーアは2度、ビタミンCの摂取を中止させた。その度に、脾臓と肝臓が肥大して柔らかくなり、38度3分
     の熱が出て白血病特有の症状である全身倦怠感と疲労感を訴えた。ビタミンCの摂取を再開すると、症状
     は急速に改善された。彼は1954年3月、73歳の時、急性心不全で死亡した。死亡時、脾臓は健全で、
     白血病、赤血球増加症、肝硬変、および心筋炎はビタミンCの大量摂取始めてからの18ヶ月間、まったく
     進行していないことが認められた。 グリーアは「ビタミンCの大量摂取はこの患者の健康にとって不可欠
     だったようにみえる」と結論している。
     1968年、チュラスキンらは、子宮頸部の扁平上皮ガンの患者に対する放射線療法がビタミンCによって
     高められる、と報告した。27人の患者に1日750ミリグラムのビタミンCが放射線療法が始まる1週間前
     から療法が終わった3週間後まで投与された。それに加えてビタミン・ミネラル総合剤が補給され、全般的
     な栄養上の助言が与えられた。対照グループは、それと同じような患者で、ビタミンと栄養上の助言が与
     えられなかった。放射線療法は両グループに対して同じように行われた。放射線の効果は対照グループ
     (平均スコア63.3)より、栄養グループ(平均スコア97.5)の方が有意に大きかった。
     このように放射線療法を受けるガン患者は、ビタミンCの必要性が増大しており、その増大した必要量を
     満たすと、放射線療法の効果が高まるとともに、放射線の有害な副作用がある程度防げる、という証拠
     がある。
     トロントの故ウィリアム・マッコーミック博士が認めたことだが、壊血病に伴う全身の結合組織(コラーゲン
     など)の変質は、浸潤するガン細胞の周辺でみられる局所の結合組織の変質と同じものである(1959年)。
     博士は、壊血病のそのような全身的な変質を防ぐことが知られている栄養素(ビタミンC)は、ガンにも同様
     な効果を示すであろう、と推測した。ガン患者がビタミンC欠乏状態にあるという事実は、博士の見解を明ら
     かに支持するものである。ジェームズ・リンドの典型的な死体解剖報告書(1753年)には「すべての部位が
     乱雑に混じりあって一つの塊になっており個々の臓器の区別がつかなかった」という一説があるこれは
     明らかに18世紀の病理解剖学者がガンの浸潤をいきいきと描写したものである。
     逆にいえば、その進行ガン患者における死直前の様相 (貧血、悪液質、極度の疲労感、出血、易感染性、
     潰瘍、副腎不全、組織・血漿・白血球のビタミンC値の異常な低下など)は、壊血病患者の死直前の様相
     と実質的に同じなのである。
    

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