提 案 書

2006年3月9日  理学博士 中島康喜

 

 2006年2月10日、山階鳥類研究所から、バンディング問題改善に対する回答書が公表されました。その前向きな回答書の内容を実践していただきたく、環境省に以下8項目の提案をさせていただきたいと思います。鳥類標識調査検討会に諮って下さい。

 

1.標識調査検討会を公開する。または議事録をすみやかに公開する

 

現在の問題点

●年度ごとの「鳥類標識調査業務報告書」でしか鳥類標識検討会の討議内容を知ることができない。

●最新報告書は平成14年度版である。これでは新しい情報を知ることができない。

 

改善提案

●環境省のホームページで、標識調査検討会議事録の即時公開。どの委員や担当者がどの発言をしたかも明記する。

●標識調査検討会そのものを一般公開し傍聴できるようにする。調査の啓蒙にも役立つ。

 

2.バンディングを教育現場や観察会等に取り入れる時のガイドラインの作成と公開

 

現在の問題点

●バンダー資格のない参加者に野鳥を触らせ、かすみ網からはずさせている(鳥獣保護法違反をさせている)。

●参加者を喜ばせるために、野鳥の翼を無理矢理広げたり口を開けさせてたりしている。

●野鳥を長時間拘束し、危険な持ち方での写真撮影を行なっている。

●標識調査をイベントに取り入れ、その開催を優先して、悪天候でも調査を強行している。

●その他、赤いフラッグを提示しない、かすみ網を張りっぱなしにして放置する等、マニュアルを無視した調査がいまだに続いている。

 

改善提案

●違反者への罰則と監督責任の所在を明示したガイドラインの作成と公開。

 

3.標識調査マニュアルの配布の早期実現

 

現在の問題点

●(上記事項2に共通する)教育現場の人間や観察会の主催者・参加者は、標識調査でやってはいけないことを知らない。それゆえ、バンダーの行き過ぎや逸脱行為を認識できない。

 

改善提案

●標識調査マニュアルを一般に配布できるようにする。標識調査に対する正しい知識を啓蒙するのに有効である。

 

4.各種計測データと識別用写真の一元管理の仕組みの構築・撮影のガイドライン作成

 

現在の問題点

●調査時に得た各種計測データはバンダーのもとにあり、一元管理されておらず有効利用できない。調査時に撮影した写真も同様。

●計測や撮影が必要である鳥種と、すでに十分データが集まり計測や撮影が不要である鳥種の区別ができず、調査時に無用な負担を野鳥に強いている懸念がある。

●危険な扱い方・持ち方での写真撮影が行われている懸念がある。

●標識調査の見学者に写真を撮影させている。

 

改善提案

●各種計測データと識別用写真の一元管理の仕組みを構築する。

●計測や撮影が不要である鳥種一覧を公開する。

●撮影時のガイドラインを作成して公開し、調査と関係無い写真撮影の禁止を徹底する。

 

5.標識調査の目的と意義についての統一見解の周知徹底

 

現在の問題点

●標識調査の目的と意義があいまい。例えば、環境省は「鳥類の保護、保全のための調査である」と断言するが、2月の回答書には「鳥類標識調査を実施して鳥類の渡りの状況や生態等を解明すること。また、それによって鳥類保護のための施策や国際協力の推進に役立つ情報を得ること」とある。

●それゆえ環境教育の現場や観察会では、参加者に誤った認識を持たせている懸念がある。

 

改善提案

●目的・意義に関して標識調査検討会で統一見解を出して公表する。

 

6.標識調査の全のデータ(怪我、死亡、網場ごとのデータ等)の公表

 

現在の問題点・課題

●標識調査において野鳥の死亡があるとの公式回答があったが(11月の佐藤氏への回答書)、その定量的データがない。

●2月の回答書では「調査日誌に事故個体の記入欄を作るなどの改訂もふくめて、今後さらに全体の状況把握に努めるとともに、負傷や死亡鳥をより減らすよう指導いたします」とある。

 

改善提案

●年次報告書に、網場ごとにの怪我鳥・死亡鳥の集計データを掲載する。

●すみやかに全データを公表する。

 

7.悪質バンダーの告発の仕組みの構築

 

現在の問題点・課題

●回答書にある「関係法令やマニュアルに沿わない行為をした悪質バンダーの調査の停止やバンダー認定証の取り消し」を確実に行う仕組みが無い。

●勇気ある告発者を守る仕組みがなく、告発者が危険にさらされる。

 

改善提案

●第三者機関を設置するなど内部告発者の保護を徹底して、悪質バンダー処分の経緯を公表する仕組みを構築する。公益通報者保護法にも留意してほしい。

 

8.シマアオジの保護

 

現在の問題点・課題

●回答書に「シマアオジがかなり顕著な減少傾向にあることが明らか」とある。

●環境省自然環境局は「標識調査によってスズメ目では多くの個体で寿命が5年より短いことが判明した」としている。このことからシマアオジの寿命も5年より短いと思われるので、絶滅までの時間的猶予はないはずである。

●準・絶滅危惧種のままシマアオジを絶滅させてしまったら標識調査の存在意義が問われかねない。

 

改善提案

●標識調査の結果を生かすべく、シマアオジの保護政策を迅速に策定して保護活動を開始する。

以上