差出人:	Nishino, Yuichi<YUICHI_NISHINO@env.go.jp>	
題名:	RE: 再送)鳥類標識検討会の議事録について。	
送信日時:	Tue 05/26/2009 18:28:39 JST
宛先:	中島康喜<hqh05760@nifty.ne.jp>
添付ファイル:	H20年度第1回標識調査検討議事録.pdf, H20年度第2回標識調査検討議事録.pdf

中島 康喜 様

返信が遅くなり申し訳ありません。ご依頼のありました鳥類標識調査検討会の議事の記録を添付のとおり送信いたします。なお、平成20年度は12月と3月の2回開催しておりますので両方の記録を送付いたします。

 


オリジナルはpdf(20.pdf20_2.pdf)ですが、見やすいようにwebページに変換してあります。


第23 回 鳥類標識検討会(平成20 年度)議事録

日 時:2008 年12 月19 日(13:30〜15:30)

場所:東京都渋谷区南平台8−14 山階鳥類研究所東京分室

出席者:検討委員(8 名中5 名参加)

         上田恵介・古南幸弘・川路則友・蓮尾純子・浜口哲一

    環境省 野生生物課:西野雄一

    生物多様性センター:鈴木真野

    山階鳥類研究所・事務局

         山岸哲・尾崎清明・米田重玄・佐藤文男・茂田良光・馬場孝雄・吉安京子

議題:1 標識調査事業の中間報告

   2 鳥類標識データベースの活用

   3 マニュアルの改訂

   4 その他

 

<議題1 標識調査事業の中間報告>

  (事務局から当年度鳥類標識事業の進捗状況を説明)

 

<議題2 鳥類標識データベースの活用>

〔事務局〕「鳥類標識データベース提供のためのルール」作成の今後のスケジュール。今回の検討委員会で意見を頂き、検討会委員、山階鳥類研究所及び環境省で策定グループを立ち上げ、具体的な案を作成していく。次回の検討会で最終的な案を決定し、その上で、バンダーへ書面で周知・確認する。その確認が済んだ上で、一般への周知、実際の運用ということになる。

標識データの帰属は全体としては環境省ではあるが、個々の放鳥記録・回収記録・測定値などは放鳥者、個々の回収データは回収者、カラーマーキングに関する観察データは観察者にある。バンディングセンターには全放鳥、回収、観察データあるいは全データベースが帰属する。

検討・留意点として、@標識調査が環境庁事業となるまでに事業主体が幾度か変わった経緯から、現行のデータベースには環境省予算を用いない部分が10 年以上あるのでその取扱。A利用方法(利用者・目的・優先権・制限・罰則・提供方法・報告義務・費用負担など)について等がある。

(環境省からルール作成のための参考として、生物多様性センターの調査成果物等の情報取扱規程について説明)

 

〔環境省〕この中の引用と利用の2 つの利用方法が、標識調査のデータの主な利用目的としてあげられると想定。

〔検討委員(川路)〕標識データで「データの内容を変更しないで一部として引用する場合」と「未加工のデータを別の媒体にコピーしたり翻訳したりする場合」は全然違うものか?

〔環境省〕全く違うものになる。

〔検討委員(川路)〕標識調査で得たデータへのバンダーの権利とは何を指すのか?標識調査は国家事業の一つである、という認識の徹底が必要。

〔環境省〕モニタリングサイト1000 の調査ボランティアの権利について弁護士に聞いたことを参考に申し上げる。「ボランティアで得た情報を提供してくれる場合、その情報に対して優先権が生じ、公文書で提出すれば秘匿情報を設けることが出来る」ということだった。そのことから「優先権」をバンダーの権利として想定。

〔検討委員(蓮尾)〕制限は少ない方が良い。最低限の所を決めればよいと思う。

〔検討委員(浜口)〕基礎的なデータは公のものであるということの徹底必要。

〔検討委員(上田)〕提供されたデータは希少種保護等に支障のあるもの以外は整理して、原則公開していくべき。公開すべきデータの公開を拒否するバンダーには、バンディングに参加してもらわなくても良いのではないか。

〔事務局〕公開・非公開データの取扱について、環境省・山階鳥類研究所・バンダーの三者間で新たに書面で申し合わせ事項を交わすべき。

〔環境省〕環境省からデータの取扱等についてまとめた書面をバンダーに示して納得して頂いた上で、データを出してもらえればいいと思料。環境省としてはなるべくこの標識調査のデータを社会に出して、利用していきたい。社会に貢献していかないと意味がない。しかし、より活用できるようにしたい反面、何でも出せば良いというものではないので、使い方についてまとめていく。

〔事務局〕鳥類の研究者ではない第三者(統計のプロ等)がデータだけを使って論文を書く可能性がある。これは解析の面から見ても問題。

〔事務局〕アメリカのルールでは放鳥者の権利を最大限認めようとしている。観察の場合、オーストラリアは放鳥者のものだと言っているが、観察例が無ければ放鳥例も生きない。放鳥と観察を1 つのデータとしてまとめて初めて意味があるという共通認識が必要。

 

<議題3 マニュアルの改訂>

〔事務局〕7 〜8 割は素稿が出ている。目次案に何か不足などあれば指摘をお願いしたい。今年度中に出版したい。販売はしないが、バンダーは持つ必要がある。これは環境省事業で作成するので行政書類。そのため、希少種情報等特別な部分を除いて最終的に公開する。

〔環境省〕業務報告書については、HP 上でダウンロード出来るようにしているものもあるが、希少種の情報を含む場合などは非公開としているものもある。

〔検討委員(古南)〕「遵法精神でやっている」と第三者が見ても判りやすいように、法令についてきちんと記載をお願いしたい。感染症予防や自分が罹患しないようにするためにどうするか、についても書いてあるのか。

〔検討委員(上田)〕法令と感染症について項目入れること。

 

<議題4 その他―捕獲報告>

〔環境省〕鳥獣捕獲許可証の報告の記載方法について様式を作成し、マニュアルの中に入れてはどうか。ご意見を頂きたい。

〔事務局〕複数の県で捕獲を行っているバンダーでは、ハンターマップのメッシュ番号だけだと何県なのかわからなくなってしまう。おそらく地方環境事務所でも、何県という記載が無いと混乱するのではないか。また、ハンターマップの入手方法が、県によっては有料でしか出さないところもある。バンダーの経済的な負担を少しでも軽くしたいので、ハンターマップを購入しなくてもメッシュ番号を調べられるような仕組みの検討が必要。

〔環境省〕鳥獣保護法の施行規則に、鳥獣捕獲報告をする際には「鳥類保護区等の地域を示した図面のメッシュ番号を書くこと」と明示され、それはハンターマップのことになる。バンダーの経済的な負担をどのようにしたら減らせるのかは検討したい。

〔事務局〕標識調査の捕獲報告の場合、鳥獣捕獲許可証の裏の欄では書ききれない場合が多いため、「鳥獣捕獲許可証の報告欄の別紙」という形で、全バンダー共通の様式を作成してはどうか。

 


第24 回 鳥類標識検討会(平成20 年度)議事録

日 時:2009 年3 月24 日(10:30〜12:10)

場所:東京都渋谷区南平台8−14 山階鳥類研究所東京分室

出席者:検討委員(8 名中6 名参加)

         上田恵介・川路則友・古南幸弘・蓮尾純子・花輪伸一・廣居忠量

    環境省 野生生物課:星野一昭・西山理行・西野雄一

    生物多様性センター:鳥居敏男・吉田祥子・鈴木真野

    山階鳥類研究所・事務局

         山岸哲・尾崎清明・米田重玄・佐藤文男・吉安京子

議題:1 標識調査事業の成果報告

   2 鳥類標識データの利用規定

   3 マニュアルの改訂

   4 今後の課題・調査項目

   5 その他

 

<議題1 標識調査事業の成果報告>

(事務局より、当年度鳥類標識事業の成果を説明)

〔検討委員(花輪)〕ズグロカモメは北九州のものはあまり動かないが、有明のものは移動する。

〔事務局〕有明は調査の時期が渡りの時期だった。

〔検討委員(花輪)〕サギの観察報告者は今までと同じ人か。

〔事務局〕一般の人が性能の良いスコープを入手して観察撮影し報告してくる。

〔検討委員(上田)〕観察撮影報告をバードウォッチングの新分野として全国的に普及できれば、標識事業の啓発にも役立つのではないか。

〔検討委員(蓮尾)〕バンディングは1 羽を記録するという性格がある。一般へ標識調査の意義を浸透させるには、統計処理するだけでなく、1 羽1 羽の興味深い事例をあげ広報する等が大事。

〔検討委員(上田)〕バンダーは面白い事例をたくさん観察しているので、上手く広報すれば標識調査への認識が高まる。

 

<議題2 鳥類標識データの利用規定>

〔環境省〕環境省に帰属する「鳥類標識データ」は、年月日・種名・足環番号・性・齢・地名・緯度経度・放鳥者名・回収者名となる。公開に関する基本的な考え方として、年月日・種名・足環番号・性・齢は公開可能。地名・緯度経度の位置情報は希少種の保護に係る場合があるので、一定の制限を設けて一般に公開(緯度経度は記録のある分まで、とすることとなった)。希少種の位置情報は非公開。調査者が論文発表をする等の理由で希望する場合は、関連するデータは基本3年間非公開。

〔検討委員(古南)〕希少種のデータといっても、標識場所の情報で営巣場所が判明してしまうオオタカのような種とその他の種で同じ扱いというのはいささか疑問。猛禽類の巣の情報以外は基本的に公開しても良いのではないか。

〔検討委員(川路)〕その年のデータの一部公開より、バンダーの優先権の切れる3 年を待って全データ公開にしたらどうか。その方が利用しやすい。

〔環境省〕HP 上で個々のデータを公開したいと考えている。即時性を重視したい。

〔事務局〕ここで個々のデータの公開という環境省の意向がハッキリしたが、細部では調整が必要。今後、規定を決めて関係者間の理解を共通にしないといけない。

 

<議題3 マニュアルの改訂>

(マニュアル改訂版の素原稿を回覧)

〔事務局〕形はほぼ出来て、用語の統一や内容の再チェック、図表・写真などの整理をしているところ。

〔検討委員(古南)〕写真撮影について何らかのモラルを書いた方が良い。

〔環境省〕死亡鳥を減らすことも重要であるので、捕獲個体の安全確保のための措置について、これまでの知見を生かして、より具体的に書いてほしい。

〔事務局〕死亡鳥の原因として一番無視できないものは他の動物による捕食である。特に調査地に居付いてしまったキツネやノイヌなどが厄介である。捕食者を捕獲して遠くへ移動することが有効と考えられるが、鳥獣法等の手続上可能かどうかを確認する必要がある。

〔環境省〕捕獲した捕食者が、特定外来種の場合については、移動や放獣は外来生物法で禁止されている。

 

<議題4 今後の課題・調査項目>

〔環境省〕予算削減に伴い調査目的の明確化を行うため、調査項目の見直しをしたい。

〔事務局〕既に調査を切り詰められるだけ詰めてしまっているので、これ以上予算が削減された場合、足環の有料化などバンダーに負担が掛かることも考えられる。

(具体的な調査項目については、環境省と山階鳥類研究所で調整することとなった)

 

<議題5 その他>

〔検討委員(上田)〕足環を付ける際に羽のサンプル収集を行う等して、人畜共通感染症の基礎調査を色々な種で積み重ねてゆく等、新しい視点を取り入れることも重要。こういうデータ・実物があれば将来役に立つ。環境省としても鳥を含めた日本の自然についての情報を将来にわたって積み重ねて、何か突発的な問題が起こったら直に対応できることが必要であると、もっと国民に伝えることが大切。

〔検討委員(古南)〕米軍移動動物病理学調査所(MAPS )が標識調査に対し研究補助金を出していた時代は、マラリア調査など人畜共通感染症との関連で基礎情報を提供した。また、密猟対策など様々な公益的なことの下支えになっている。この点をもっと評価してほしい。野生動物の感染症の研究体制をきちんと作ることが、突破口にならないか。バンダーがいなくなると日本の自然保護は困る。

〔検討委員(花輪)〕標識調査やモニタリング1000 など、環境省事業のかなりの部分をボランティアが支えている。

〔検討委員(廣居)〕シギチドリ類の東アジア渡りルートでは、アメリカやオーストラリアが力を入れている。これは東南アジアからアメリカに病原菌が運ばれることを懸念して基礎調査として行なっている。国際的にも日本の重要性が高まっている。

〔環境省〕シギチドリ類のバンディングについて重要性は理解した。但し、標識調査の予算が厳しいので、鳥類標識調査以外の枠組みで実施可能か検討したい。