愛知県名古屋市

 中島 康喜 様

環境省自然環境局野生生物課

野生生物保護行政の推進につきまして、ご理解をいただき感謝申し上げます。2006 年11 月19 日に質問のありました件について以下のとおり回答いたします。返事が遅くなりましたことをお詫び申し上げます。

 

1 .バンダーの問題行為について

1 −1 鳥類標識調査の委託元として、委託先である山階鳥類研究所を指導しないのはなぜですか。

1 −2 バンダーの問題行為の最終的な責任の所在はどこにあるのですか。

 

【1 −1 〜2 への回答】

捕獲時の注意事項が守られていない、捕獲した鳥類の取扱が不適切である等の問題が確認され、そのことに対する山階鳥類研究所の対応が不適切であった場合には、環境省として鳥類標識調査の委託先である山階鳥類研究所に対し指導することとしているところであります。

山階鳥類研究所においても、講習会での指導、バンダーに送付する「バンディングセンター事務連絡」等によって、調査実施の際の注意事項の徹底を行っております。

 

 

2 .鳥インフルエンザの調査について

2 −1 このような杜撰な調査は環境省の主導で行われたということですか。この調査の責任はどこにありますか。

3 .2 に関連して

3 −1 環境省から厚生労働省への回答がないのはなぜですか。

4 .現在でも続くバンダーによる鳥インフルエンザの調査について

4 −1 このような調査がいまだ続いているのは、環境省が調査手法に問題はないと考えているからですか。現在行われている調査の責任はどこにありますか。

 

【2 〜4 −1 への回答】

2004 年3 月の京都府丹波町での高病原性鳥インフルエンザ発生地周辺の野鳥のウイルス保有状況調査は、京都府と連携し実施しており、調査に当たっての防疫措置については、京都府の保健・健康担当部局及びウイルス学の専門家の指導も受けており、適切に実施されたと考えています。

 

 

5 .鳥類標識調査の目的について

5 −1 環境省では、「調査のためには仕方がない犠牲率」だと考えているのですか。

5 −2 調査が、希少種や絶滅危惧種を減少させる一因となっているとは考えられませんか。つまり、鳥類標識調査は目的と正反対の結果を残しつつあるのではないですか。

 

【5 −1 〜2 への回答】

鳥類標識調査では、二種類のデータを収集しています。一つは、標識調査で捕獲して足環を装着して放鳥した鳥についてのものであり、いつ、どこで、どんな鳥が何羽いたのか、オスかメスか、などのデータです(以下「放鳥データ」とします)。もう一つは、放鳥した鳥がその後にいつどこで回収されたかというデータです(以下「回収データ」とします)。質問書にある渡りのデータとは、後者の回収データのことを指すと思われますが、鳥類標識調査では、放鳥データについてはこれまでに200 万羽を超えるデータを収集しています。放鳥データから得られる鳥類の情報も、鳥類の基礎データとして極めて重要なものであると考えております。

鳥類標識調査にあたっては、見回り回数を増やす、天候状況を考慮してきめ細かな対応をするなど、鳥類への影響を最小限に抑えるための配慮を行うよう、山階鳥類研究所からバンダーに対して指導を行っていますが、環境省としても、当該配慮事項についてバンダーへの指導を一層徹底するよう、今後も山階鳥類研究所を適切に指導していきたいと考えております。

 

 

6 .鳥類の保護施策について

6 −1 .標識調査のデータを活用しようとしないのはなぜですか。その責任はどこにありますか。標識調査のデータは信頼できないので、環境省では標識調査のデータによって保護施策の必要性を判断できないと考えているのですか。

6 −2 .また、絶滅危惧種など早急な保護施策が必要ある鳥種では、データ集積に時間のかかる標識調査は有効でないだけでなく絶滅や減少を加速する要因となっているとは考えられませんか。

6 −3 .つまり、無差別な標識調査をやめて、地域や種を限定したものにする必要があると考えられませんか。

 

【6 −1 〜3 への回答】

鳥類標識調査の結果、例えば二国間渡り鳥条約の締約国との間で渡りが確認された種については二国間渡り鳥条約の渡り鳥リストに追加するなど、鳥類標識調査の成果は鳥類の保護施策の推進に活用されております。また、標識調査データは渡りルートの解明、野生状態における鳥類の寿命の把握、我が国の鳥類相の把握等に資するデータとなっております。鳥類の保護策の検討にあたっては、その種の生態にかかる基礎的な情報の把握が必要であると考えており、標識調査は基礎情報の収集において有効であると考えております。

 

 

7 .鳥類標識調査で装着される足環の安全性について

7 −1 .鳥類標識調査で装着される足環が安全上問題ないという、学術論文・報告書など科学的な根拠を示して下さい。なお、我が国への渡りのルートの大半は海上移動なので、陸上移動が大半の欧米の研究結果は当てはまりません。

 

【7 −1 への回答】

国内では、日本野鳥の会研究論文集掲載の「鳥類への足環装着の安全性−小型種における足環の重さの影響−」(石田健、1992 、Strix11 、293-298 )において、「体重比1 %前後あるいは1 %以内という足環の重さは十分に小さい値であり、重さの点で鳥からだに著しい負荷を与えるとは思われない。」と結論づけられています。

また、周囲を海洋に囲まれる島国であるという地理的条件が日本に類似しているイギリスにおいては、イギリス鳥類学トラスト(British Trust for Ornithology )が標識調査を実施していますが、同団体では、HP において、鳥類に装着する足環の鳥類への影響について以下の通り示しています。

Does ringing affect the birds?

The simple answer is no. Ringing is carried out by skilled ringers with the utmost consideration for the birdsユ welfare. It is not surprising that ringing has little effect on birds because relative to the birdユs weight, wearing a ring is similar to a person carrying a mobile phone. It is essential that birds are not affected unduly by the fitting and wearing of a ring; if they were, ringing would not tell us how normal birds behave. Many studies have shown that birds ringed during the breeding season quickly return to incubating eggs, or feeding chicks, once they are released, and long distance migrants continue to travel thousands of miles between breeding and wintering grounds.

(仮訳)

足環装着は鳥類へ影響を与えるか?

影響はありません。足環装着は熟練した者によって鳥類へ最大限の配慮しつつ実施されています。鳥類の体重と比較すると、足環を装着するということは、人間が携帯電話を持ち運ぶようなものであり、足環装着は鳥類へほとんど影響を与えないというのは驚くことではありません。足環装着によって鳥類が過度に影響を受けないというのは重要なことで、仮に鳥類が影響を受けるのであれば、足環による調査からは鳥類の通常の行動について情報を得ることが出来ないことになります。これまでの多くの調査からは、繁殖期間中に足環を装着された鳥類が、放鳥されると即座に抱卵中の卵や餌を与える雛のもとにもどり、また、長距離を移動する渡り鳥については越冬地と繁殖地の間の数千マイルの距離を移動し続けることが分かっています。

 

8 .委託契約書について

8 −1

鳥類標識調査は「随意契約」による山階鳥類研究所への委託とのことです。契約書(仕様書を含む)と関連書類を公開して下さい。

 

【8 −1 への回答】

契約書等の公開は情報公開法に定められた手続きにより行っておりますので、請求書の様式等をお送り致します。