第26 回 鳥類標識検討会について(平成22 年度)議事録概要
日時:平成23 年3 月24 日(木) 13:30 〜15 :30
場所:(財)山階鳥類研究所 東京分室
出席者:検討委員(7 名中5 名参加)
上田恵介・川路則友・古南幸弘・永田尚志・広居忠量
環境省 水谷知生(環境省生物多様性センター長)
田中大和(環境省生物多様性センター情報システム企画官)
伊崎実那(環境省野生生物課)
山階鳥類研究所・事務局
林良博・尾崎清明・佐藤文男・吉安京子
議題:1 標識調査事業の成果報告
2 鳥類標識データベースの活用について
3 データ入力について
4 アトラスについて
5 その他
* 議長に上田氏を選出する
<議題1 標識調査事業の成果報告>
[事務局]本年度事業は概ね無事に終了した(資料に沿って説明)。出水ST については、鳥インフルエンザ発生のため調査は自粛してほしいと市から通達があり、やむを得ず薩摩川内市のヨシ原にて調査を行なった。
三貫島・日出島・蒲生ST は、海鳥の繁殖地が津波の影響を受けた可能性があり新年度に調査が必要。蕪島は無事であった。
[事務局]放鳥・回収データの説明(資料に沿って説明)
・外国回収64 例、うちオナガガモ26 例
・国内回収296 例、うち観察回収149 例(デジタルカメラの普及で読取りによる確認
が増えた)
・長寿記録更新 5 種
・長距離移動 ハシボソミズナギドリ、ミユビシギ
・初回収記録 ウミスズメ(カナダ放鳥―青森回収)
[川路]放鳥数、回収数などはこの10 年程横ばいだが、今年の特徴は?
[事務局]例年並みという印象である。
[永田]外国回収のうち9 件が無効とはなにか?
[事務局]回収報告に重複があったためである。
[広居] シギ・チドリ類で使い始めた文字入りフラッグをキアシシギに大量につければ観察回収がもっと増えるのではないか?
[事務局]シギ・チドリ類の写真による報告も多いので、整理が進めば回収データが増えるだろう。ツル・ユリカモメ・カワウ・ガン・ハクチョウなどの記録もデータベースに順次入れて行けば種別回収数は変わるだろう。また、飼育個体を再導入したトキ・コウノトリのデータも今後入ってくると思う。
[川路]放鳥数を増やす、回収しやすいものにつけるなどの他に回収を増やす案はないのか?回収数が横ばいなのは心配。なくとも上向きになるようなことを考えたい。
[事務局]国内のバンダー間で、国外では韓国、中国、ロシアなどと同じ時期に同じ種類に注目していけば回収も増えるだろう。この3 〜5 年中国での小鳥類の標識数が増え、わずかだが両国間の回収が増えてきた。韓国には標識協会からメンバーを派遣して、協力して小鳥類の標識をしようという動きになっている。
[永田]観察データの報告者にも記念品のシールは配布しているのか?
[事務局]している
[永田]そのシールを励みに記録を送ってくれる人が増えると思う。
[上田]バンダー数の増減はどうか?
[事務局]引退する人もいれば新しくバンダーになる人もいるので、数字的には同じで高齢化しているというわけでもない。
[川路]今の講習会のシステムはどうなっているのか?
[事務局]一昨年までは5 泊6 日コースを2 回行なってきたが、昨年から最低3 日の実技講習を2 回と2 泊3 日の講義講習1 回を必須とした。
[古南](観察回収の件について) クロツラへラサギの一斉カウントなどでもカラーリングの写真を撮っているので、ルールをつくりデータを整理していきたい。
[事務局]クロツラヘラサギのカラーリング観察データを頂けるのは有り難い。
可能ならインターネット上に観察者が直接データ入力したものをチェックし、そのままデータベース化していけるような体制にしてゆきたい。
[広居]クロツラヘラサギはカラーリングの色と数字の種類がないので直接入力可能だろうが、シギ・チドリ類の場合はカラーリングの組合せを正しく読んでくれる例がないことが問題。写真を解析するのは1 日に10 例が限度で、なるべく観察者に正確な読み取りをお願いしたい。
[環境省]WEB を使えば観察データを集めることは難しくないが、それを誰がチェックするのかなどの体制が確保されることが課題である。
<議題2 鳥類標識データベースの活用について>
[事務局]データベースの利用件数は増えてきている(資料に沿って説明)。
[上田]提供したデータを使って成果物ができた例はあるのか?
[事務局]市の自然史を冊子にし、送ってくれた。
[永田]実際にデータを提供した数は?
[事務局]2008 年7 件、2009 年8 件、2010 年10 件である。
[小南]データベースの活用例を出せば無駄な問合せが減るのでは?
[事務局]申請書を送る段階で利用できるデータを明記しているので、それを見て申請しなかった人もいるだろう。データを提供した先からはあまり成果物がきていないので、まだデータの加工中だと思われる。
[川路]データベースの活用案内は生物多様性センターのHP にのっているのか?
[環境省]のっている。
[林]データベースそのものをHP に公開すれば活用者が増えるのではないか。
[事務局]データの性質上公開には問題がある。
[林]日本語ならば、外国の研究者はアクセスすることが厳しいのでは?
[事務局] 外国人研究者からは、「このようなデータがほしい」と直接メールがくるのでそれに対応している。
[林]「行政は外国関係機関に資料提供」とあるが、行政側でデータを外国語に直したのか?
[事務局]これは習志野市における件で、姉妹提携しているオーストラリア(の都市)に情報を提供したいと習志野市から山階に要請がきたので、山階で英語に直して提出した。データベース上で種名は記号化されており、学名・和名への加工は難しくない。
[林]位置情報は?
[事務局]緯度経度で示している。地名もコード化され、英語表記もある。
[広居]「資料2 鳥類標識データベースの活用について」は業務報告書のどこに記されているのか。データを公表することにし、その活用方法についてのルールも定めたのだから、実際どのように活用されたのかを載せるべきである。
[事務局]標識関係の文献集が今後巻末に入る予定である。
[林]HP でデータベースを公開することの問題点は希種のデータなのでそれさえ見られないようにすれば良いのでは?
[事務局]観察データではなく捕獲データなので問題がある。
[林] どのような人物が申し込んできたかを初めにきちんとチェックし、パスワードを渡して利用してもらうのはどうか。
[上田]外国のデータベースは公開されているのか?我々も利用できるのか?
[事務局]アメリカでは足環番号をHP 上で検索できるが、データベースそのものは公開されていない。アメリカではレポートにする場合に放鳥者と回収者の同意を得る必要がある。EURINGはヨーロッパのリカバリーを一括管理しており、ダウンロードはできないが目的に応じて必要なデータを提供してくれる。
[古南]アメリカ以外で放鳥者・回収者の同意が必要なのは?
[事務局]オーストラリアでは3 年間は放鳥者に解析・報告する権利が与えられており、それ以降は放鳥者が申し出ない限り利用できるシステムである(日本も同システム)
<議題3 データ入力について>
[事務局]バンダーによるコンピュータ入力による報告は順調にのびており、2010 年ではセンターでの入力と半々程である。現行の入力システムが64 ビットのパソコンに対応していないのが問題となっている。
[永田]もっと汎用なシステムで作ってもらわないと不便、古いシステムに縛られているのは問題。
[上田]システムが古いと今後入力してくれる人が減ってしまう。
[事務局]新しいコンピュータに対応したシステムは当然考えなければならないが、予算の都合などから実現がいつになるかはわからない。
[永田]エクセルで入力できるようにするのがよいのではないか。
[林]バンダーによる入力が徐々に増えているのはわかるが、センターでの入力と合わせたトータルは減っているのか。
[事務局]放鳥数はおおむね頭打ち。コンピュータ入力者のセンターへの報告は年に1 回としたため、報告数でみると減している。
[事務局] 現在山階が持っているデータは1924 −1946 年の農林省、1961 −1971 年のMAPS など、1972 年からの環境庁・環境省の3 つの時代に大別される。回収記録については全て入力済みだが、農林省時代と1972 −1982 年までの放鳥記録が未入力である。
[上田]農林省時代のものはどのくらいの数があるのか。
[事務局]30 万羽位ある。年ごとの放鳥数の報告は存在する。回収記録に関してはデータベース化できたので現在と同じ基準で比較ができるようになった。
[川路]戦後農林省で行なっていた調査があったように思うが。
[事務局]1961 −1971 年の「MAPS 等」の「等」に林野庁が含まれている。
[上田]戦後しばらくは調査していなかったのか。
[事務局]15 年間の空白がある。1945 年と1946 年は回収記録のみで放鳥はしていない。
<議題4 アトラスについて>
[環境省]2002 年に1995 年までのデータに基づく鳥類アトラスを出したが、その中身をweb 上で公開する準備をしている。種別と県別に回収記録を地図(google earth )上で示すような形などを想定している。来年度準備ができた段階で公開予定である。
[古南]カモ類を先行して公開してほしい。鳥インフルエンザが出るたびに問い合わせが来る。
[永田]任意の地域を指定しての検索はできる仕組みなのか。
[環境省]技術的に不可能ではないと思うが、条件を細かくしたものはむずかしい。
[事務局]標識調査の結果の地図化は各国で行なわれているが、 google earth 上で閲覧できる点ではさきがけている。国により回収記録の扱い方が違うので国間での回収記録の掲載には調整が必要であろう。
[事務局]1995 年から15 年が経っており、アトラスの改訂が求められる。解説部分については山階で全てを行なうのは大変なため、種によってはバンダーに協力してもらうことも考えている。
<議題5 その他>
[事務局](標識調査関連の国際会議などについて近況報告)
[川路]カラーマーキングの取り扱いについて日本の窓口を決める必要だと思う。
[事務局]費用が一番の問題である。山階が行なう場合、対象種が多くなると時間的にも困難である。シギ・チについては標識事業に含めているがほかはボランタリーである。
[川路]何らかの業務でやらないとまとまらないのではないか。
[永田]研究者が種ごとの担当を決めるなどし、たとえば標識協会がその担当を把握しておくような仕組みしかないのではないか。
[川路]標識協会には権限がない。装着者に協力の意思がなければどうにもならない。
[事務局]バンダーであれば保全研側が調査内容を把握できるが、非バンダーが行なうものについては許可の状況すら把握できない。他の人に観察されるような種については何らかのルールが必要。最低でも装着者がわかるようにしておかないといけない。
[環境省]これまでの許可状況は申請書を一つ一つ確認しなくてはならず調べることが困難。
[川路]環境省が許可を出すときに、カラーマーキングに関してはどこかへの報告を義務付けるのが良いのではないか。標識協会のHP 上では呼びかけてはいるが反応がない。
[上田]環境省に実現可能な形で考えていただくということですね。
[環境省]生物多様性センターは許可を出す立場ではないので本省の担当に連絡する。集まった情報を鳥類標識協会等で整理してもらえるのであれば、許可を行っている地方環境事務所や都道府県から、許可証を交付する際に、「お願い」という形で協力を求めることはできるかもしれない。(了)
2011.6.2.追記この議事概要をお読みいただいた方からご指摘をいただきましたので追記します。以下5点の指摘です。
第1点)
「国内回収296 例、うち観察回収149 例(デジタルカメラの普及で読取りによる確認が増えた)」と、「回収数などはこの10 年程横ばいだが、今年の特徴は?」
この2つの発言のつじつまが合わない。デジカメによる観察回収の増加分が、通常回収の減少をカバーしているということなのか?
第2点)
「[事務局]シギ・チドリ類の写真による報告も多いので、整理が進めば回収データが増えるだろう。」
足環装着の回収が駄目なので、フラッグ頼りということではないのか?
第3点)
「[永田]観察データの報告者にも記念品のシールは配布しているのか?」
「[事務局]している」
「報告したがシールは受け取っていない」と言っている人が居る。
第4点)
「可能ならインターネット上に観察者が直接データ入力したものをチェックし、そのままデータベース化していけるような体制にしてゆきたい。」
まず自分達がやるべき努力をした上で、どうしても出来ないのなら、ボランティアにお願いするべき項目ではないだろうか。
第5点)
「・・・シギ・チドリ類の場合はカラーリングの組合せを正しく読んでくれる例がないことが問題。」
フラッグをつける位置がルール通りでないことに問題がある。また、安物を使うために、フラッグの色あせが発生したり脱落したりするのではないか。
まとめ)
足環による回収は実効性が無く、衛星追跡やシギ・チドリに取り付けられるフラッグに実績を奪われつつあるようだ。鳥類標識調査において、旧態依然の足環による方法は急速に意義を失いつつあるのではないか。