★実際には本文はタテ書きとなります。「絵本のタイトル」と「メッセージ」はヨコ書きです。 ★赤字の部分がご希望の通りに変わります。 |
まりなちゃんと はなのようせい |
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よこた まりなちゃん へ 2020年3月15日 おばあちゃん より |
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あたたかい はるのひです。 モクレンの うすむらさきいろのはなが うたっています。 スミレも タンポポも ほほえんでいます。 まりなちゃんは ちかくの のはらに はなをつみに いきました。 ピンクの じゅうたんを しきつめたような レンゲのはなで いっぱいの のはらです。 まりなちゃんが レンゲのはなで かわいいくびかざりを あんでいると うつくしい ちょうちょが とんできて いいました。 「あなたが まりなちゃんですね。 ずっと さがしていました。 どうか わたしのはなしを きいてください」 |
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「じつは わたしのすむ ようせいのくにのおうじさまが おきさきを おえらびになる ぶとうかいを ひらくことになりました。 ところが ユリのようせいに うらないをしてもらうと そのよる ようせいのくにに とても ふきつなことがおこり くには ほろびてしまうだろう というのです。 ようせいのくにを すくえるのは まりなちゃんというなまえの 5さいの おんなのこだけだとも。 ユリのようせいの うらないが はずれたことは いちどだってありません」 まりなちゃんは ちょうちょのはなしに ちょっとおどろきました。 でも こまっているちょうちょが きのどくになり いいました。 「わたしに できることなら ぜひ おてつだい させてください」 ちょうちょは たいへんよろこんで 「それでは さっそく まいりましょう」 と はるかぜに のって まいあがりました。 |
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やがて にじいろの きりが たちこめてきて ちょうちょは そのきりの なかに きえていきました。 まりなちゃんも きれいで よいかおりのする きりのなかに はいっていきました。 きりが すこしずつ はれてくると まりなちゃんの めの まえに うつくしい バラのアーチが あらわれました。 そして そのむこうには まりなちゃんが いままで みたこともないような あいらしい はなぞのが のぞいていました。 「さあ ここが ようせいのくにです。 この はなのかんむりを かぶってください」 |
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ちょうちょが はなのかんむりを まりなちゃんのあたまに のせると まりなちゃんは みるみる ちいさくなりました。 そして きれいな スズランの はなびらで できた かわいらしいドレスに つつまれました。 まりなちゃんは うれしくなって あたりを みわたしました。 すると あちこちの はなかげに かわいらしい ようせいの すがたが ありました。 |
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ようせいたちは みな こんやの ぶとうかいに そなえて おけしょうの さいちゅうでした。 ツキミソウのようせいは つややかな クリームいろのドレスに おそろいの かわいらしい くつをはき クリームいろの アイシャドーをつけて とても みりょくてきです。 マリーゴールドのようせいの きんいろのドレスも うっとりするほどの うつくしさ。 かがみの まえで サッシュを しめてもらっているのは ポピーのようせい。 まりなちゃんは すてきな ようせいたちに ただ みとれるばかりでした。 |
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そんな はなのようせいたちの なかで ひときわ きよらかで うつくしいのが バラのようせいでした。 「まりなちゃん よくいらして くださいました。 ぶとうかいが ぶじにおわりますように みとどけてください」 バラのようせいは まりなちゃんのてをとって いいました。 「バラのようせいさん。そんなに しんぱいしないで! きっと おやくに たてると おもいます。 どうぞ あんしんして ぶとうかいに いらしてください」 まりなちゃんは ちからづよく いいました。 「まりなちゃん ありがとう。 これで あかるい きもちで ぶとうかいに いくことが できそうです」 |
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そのころ おしろの そばにある おおきな カシのきの あなにすむ クモのまじょも ぶとうかいにいく じゅんびを していました。 クモのいとで おった くろいドレスと あかいめが ロウソクのひかりに あやしく ひかっています。 「この まほうのかめんを かぶれば どんなに よごれたこころも かがやくばかりの うつくしさ。 おうじさまも むちゅうになるはず。 おきさきに なったら このくにを のっとって わたしの おもいのままに してしまおう」 まじょは あやしく わらいました。 |
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こがねいろの ゆうひがしずみ あたりは すっかり よるのけはいに つつまれました。 さあ ぶとうかいの はじまりです。 つきのひかりに てらしだされた ふしぎな ひろばに あつまった ようせいたちは おもいおもいの うつくしい ドレスを みにまとい それはそれは はなやかです。 まりなちゃんは ゆめのような ぶとうかいを ちょうちょといっしょに きんいろのクッションにすわり ながめていました。 うつくしい ようせいたちの なかでも おうじさまは やはり バラのようせいの きよらかな うつくしさに こころを うたれました。 そして 「わたしの おきさきは このかたをおいて ほかにいない」 と おもうのでした。 かろやかに ゆうがに おどる おうじさまとバラのようせいの すがたに だれもがみとれ おにあいだと ささやきあいました。 |
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「ダンスの おあいてに えらばれるのは わたしのはず」 と じしんたっぷりだった クモのまじょは かめんの おくで おそろしい キバを むきました。 そして バラのようせいと おどっている おうじさまに しずかにちかづいて めにみえない クモのいとを まきつけたのです。 すると おうじさまは ふらふらと バラのようせいの もとをはなれて クモのまじょと おどりはじめました。 「くろいドレスのかたって いったい どんなかたなのかしら」 まりなちゃんが そうおもいながら ふたりに ちかづいたとき まじょは「しまった」と おもいました。 まさか ここに にんげんが いるとは おもっても みなかったのです。 まほうのかめんも にんげんには つうじません。 まりなちゃんには うつくしい かめんを とおして らんらんとひかる あかいめが みえたのです。 |
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まりなちゃんは おもいきり おおきなこえで さけびました。 「おうじさま! くろいドレスのかたは きけんです」 おうじさまは はっとわれにかえり けんをぬきました。 まじょは かめんを むしりとると まほうのつえを ふりあげて おうじさまのけんを たたきおとしました。 まりなちゃんは むちゅうで おうじさまの おとした けんを ひろって クモのまじょに なげつけました。 けんがあたると クモのからだは けむりと ともにきえうせて くろいドレスだけが のこりました。 |
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おうじさまは まりなちゃんに かけよりました。 「あぶないところでした。 よく クモのしょうたいが わかりましたね」 「ありがとう。たいせつな わたしたちの おうじさまと うつくしい ようせいのくにを すくっていただいて」 と バラのようせいも なみだを いっぱいためて いいました。 おうじさまは まりなちゃんに いいました。 「こんやは ほんとうに ありがとう。 おかげで たいせつなひとを みつけることが できました」 おうじさまと バラのようせいは まもなく けっこんすることに なりました。 まりなちゃんは ふたりの けっこんしきの ようすを おもいうかべて とても しあわせな きもちになりました。 きっと どんなにか はなやかで うつくしい ことでしょう。 こうして おうじさまは すばらしいおきさきを みつけることができたのでした。 |
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いつしか そらも うすべにいろに そまっていました。 やがて どこからか ちょうちょのひく かぜのばしゃが やってきました。 まりなちゃんが よこはましのいえに かえるときが きたのです。 「さようなら おうじさま。さようなら バラのようせい」 「さようなら まりなちゃん。 わたしたちの けっこんしきには きっと いらしてくださいね」 まりなちゃんは うなずきました。 まりなちゃんは ばしゃのなかで おみやげに もらった つつみをあけてみました。 なかに はいっていたのは うつくしい オルゴールでした。 ふたを あけると おうじさまと バラのようせいが ぶとうかいで おどった きょくが ながれてきたのでした。 |